情シスの車窓から

日常に感じたこと、徒然なるままに。

夢野久作/少女地獄 読破

夢野久作の短編小説、少女地獄を読破。

 

少女地獄 - Wikipedia

 

夢野久作ドグラマグラしか読んでいなかったので、とっつきにくさを感じていたが、本小説は短編小説でもあり、言葉も難しくなく、自然と感情移入できる作品であった。

 

短編ということで、

1.何でも無い

2.殺人リレー

3.火星の女

の3部作である。

 

どの作品も怪奇系だと思うが、

・何でも無いは、世にも奇妙な物語

・殺人リレーは、おもいっきりテレビのあなたの知らない世界の稲川淳二あるいは、笑うセールスマン

・火星の女は深夜枠

な印象。

 

特に、印象的なのは、やはり火星の女。

これは恐らく、日本、いや世界中で起きていたことであろう。

どの世にも男性社会が当たり前であった社会があった。

ということはこのような事はどの女性にも起こりえたことと思う。

 

この親の会話をあなたが聞いたらどう思うか。

まさに少女地獄である。

 

私の両親も私の顔を見るたんびに溜息ばかり吐いておりました。

親としての興味を全くなくしたような絶望的な眼で私を見ておりましたが、そんな気持ちも私は察し過ぎるくらい、察しておりました。

 

忘れもしません。今年の3月17日、私たちの卒業式のあった日の午後の事でした。

私は式から帰って来て、制服を平常着に脱ぎかえております間に、茶の間で話しております両親の言葉を聞くともなく聞いて終いました。

 

「あれが片付かんと、妹二人を縁付ける訳には行かんからのう」

 

「そうですねえ。いっそのこと病気にでもなって、死んででもくれればホットするのですが、あれ一人は一度も病気しませんし・・・」

 

「ハハハ。生憎なもんじゃ。片輪なら片輪で又、ほかの分別もあるがのう」

 

こんな会話を聞きました時の私の気持・・・世間的には随分、気の強い女になったつもりでおりながらも、内心ではまだ、ありとあらゆる愛情というものに、焦げ付くほどの執着を持っておりました私が、人間としての最後の愛からまでも見離されておることを、ハッキリと知りました時の私のたまらなさ・・・

 

もう涙なしでは読めなくなるのである。

このような絶望を感じた時、人は何かプッツンと線が切れて、大きな行動・衝動にかられてしまう。

 

現代社会の虐待を受けた子供や、戦争体験をした子供にも通ずることでもあると思う。

 

とにかく、この夢野久作さんは天才であると改めて思った。

そしてまた私の尊敬する人リストに加えさせて頂く。