ハイパーインフレおじさんと言われている、元JPモルガン銀行の藤巻氏。
最近の日銀について以下のように語っているが、氏の仰る事は冷静になればその通りに思う。
しかし、自分は2100兆円といわれる日本の金融資産、またコロナ対応・ウクライナ戦争・今回のハマス襲撃対応などによる各国の財政出動等は日本に限った事ではない。
つまり米国で毎年のように繰り広げられる政府機関閉鎖危機に象徴される、国への信用の揺らぎ等は、日本に限った事ではないとも思う。
しかし、昔から変わらない進まない政治を世界から見られていると思うと、
本当に不安にも思う。
とかく、日本円オンリーは危ないということはセオリーであると思う。
が・・・国内でハイパーインフレや、急激な円安が起きた時に、
庶民が外貨を多少持っていたとしても、??疑問とも思う。
日銀は10月30日、31日の金融政策決定会合で、YCC(イールド・カーブ・コントロール、長短金利操作)の再修正が決定した。長期金利1%を事実上の上限としていたが、1%を超える金利上昇を一定程度容認する。金融緩和の継続を堅持することも決めた。
日銀は「まだ物価上昇が確実でない」と主張し、物価上昇を促す金融緩和政策をとっている。筆者が思うに、日銀は「緩和を堅持しているどころか加速させている」と言っていい。正確に表現するなら“緩和継続”ではなく、“緩和加速”である。
■行き着く先は「円の紙くず化」…開業以来、最大の危機
そう書いたのは、長期金利の更なる上昇を抑えるために、債券市場から国債を大量に購入する「国債買いオペ」を強化しているからだ。国債買いオペとは、お金を市中銀行に振り込むことでもある。市中にあるお金の量を増加させる(=日銀バランスシートを膨らませる)のだから量的緩和の拡大なのだ。市中にあるお金の量を一定量に保つ「量的緩和の維持」にとどまらない。
市中にあるお金を吸収している欧米の中央銀行とは真逆の行動である。お金がバラマキ続けられれば、その価値はますます希薄化(=円安、インフレ加速)していく。
政府が物価対策としてガソリンなどへの補助金を出し、所得減税まで予定しているにもかかわらず日銀は、真逆の政策をとっている。普通の消費者感覚からすれば理解不能のはずだ。
もうロジカルな思考経路を持つ人なら気がついてもいいはずだ。
日銀は金融緩和を止めたくてもできないのだ。解除したらとんでもない事態が待っていることを頭のいい植田和男日銀総裁は、十二分に理解されている。だからこそ無理やり「緩和を継続する方便」を見つけ出し、緩和を継続(加速)させることに汲々としている。
日銀は追い詰められている。明治15年の開業以来の最大の危機に直面している。それはとりもなおさず「円の紙くず化」の危機だ。
■長期金利1%で日銀と日本の金融システムは崖っぷち
今回の政策決定会合での微調整でさえ国債売りは優勢となり、長期金利(10年債金利)は一時上昇。11月1日には0.97%をつけた。10年5カ月ぶりの高水準だ。いよいよ金利1.0%に迫ってきた。
長期金利が1.0%になると、日銀や日本の金融システムはどうなるのか。金利上昇は債券価格の下落を意味する。つまり様々な金融機関の保有債券評価額(評価損、いわゆる含み損)が拡大することになる。
そして債務超過の最も恐ろしいのは、その企業の信用が著しく傷つくことだ。日銀であっても同様である。
中央銀行への信用が失われれば、その発行する通貨の信用は失墜しハイパーインフレ(=通貨価値の大暴落)が起きるとおっしゃったのだ。中央銀行の信用失墜の最たるものの一つが債務超過だ。
自国民ならともかく、外国人は債務超過の中央銀行が発行した通貨など信用しない。輸出しても、そんな通貨よりドルを所望する。貴重なドルを売ってまで、そんな中央銀行が発行する通貨など受け取らない。
■「Xデイ」はいつなのか
「Xデイはいつなのか。それが言えないのならフジマキの主張はいい加減である」とよく言われる。
そのきっかけとなり得る一つが、米銀の日銀当座預金口座の閉鎖だと思っている。撤退の意思決定は米銀審査部のごく少数の幹部や経営陣が秘密裏に行うだろう。私には彼らがどう分析するかはわからない。彼らの頭の中までは見えない。
日銀が純資産である限り、そのような決断はしないのではないか、と思っている。しかし日銀が債務超過になったら話は別である。日銀が債務超過に陥るのか、いまだ純資産であるかは、極めて重要なポイントなのだ。
日銀もその点は十分わかっている。だからこそ1%を超える長期金利の上昇を絶対に許すわけにはいかないはずだ。黒田東彦・前総裁時代から、日銀はETF(上場投資信託)の爆買いを続けてきた。株式の含み益の額によって債務超過に陥るレベルは多少上下するだろうが、1%からそれほど離れているとは思えない。
いずれにせよ、日銀が許容できる金利上限は、もう目と鼻の先なのだ。
■日本円の大暴落は一瞬で起きる
経済評論家やマスコミは、物価上昇を抑えるために「YCCを撤廃するべきだ」と主張する。もちろん植田総裁は十二分にわかっている。
しかしYCCを撤廃すれば、長期金利1%をはるかに超える。債務超過、円のローカルカレンシー化、すなわち大暴落の引き金をひいてしまう。そうなればハイパーインフレに一直線だ。日銀にYCC廃止などできるわけがないのだ。
外資の日銀当座預金閉鎖は一晩で起こりうる。その時、日本円しか持っていない日本人はどうやって資産を守るのか。そんなリスクを背負うことを賢明だとは思わない。
なお、金融論的には、「中央銀行が債務超過に陥っても大丈夫な条件」が3つある。
① 債務超過が一時的である。
② 金融システム救済のために債務超過になるが中央銀行自体のオペレーションは健全である。
③ 国家の財政が健全化に向かっており、近い将来、税収で、中央銀行の債務超過を補塡(ほてん)できる
との3条件である。米銀の審査部はこの辺を考えながら、日銀当座預金を閉鎖するか否かの判断をすることになるだろう。現在の日銀は上の3条件、どれ一つ該当していない。
■マイナス金利政策解除では何も変わらない
先月31日の政策決定会合の際には、YCCのほかに「マイナス金利政策の解除」が可能性として取りざたされていた。
私は、これが日銀の取れる唯一のオペレーションであり、いつかはこれを行うと思っている。しかし、これは「金融緩和政策の変更もどき」であって実質的に何の意味もない。金融緩和の解除などとはお世辞にも言えない。 情けないことに、多くのマスコミがマイナス金利政策を「重大な政策変更」と誤解している。非常に多くの外国人もそうだ。 お化けは「出るぞ、出るぞ」と脅されているときが一番怖く、出てしまえば、「なんだ」と言うことになってしまう。それと同じだ。しかし、スカだからこそ日銀はできる。そして何も変わらない。
世界各国の中央銀行は、政策金利の変更を通じて市中金利に影響を与えようとする。銀行間の貸借レートに変化を与え、貸出金利、企業への融資レート、FXのスワップポイントに反映させることを狙う。
FED(米国の中央銀行)も同様だ。現在のFEDの政策金利5.25~5.5%は、銀行間の1日間の貸借レートそのものだ。だからこそ、FEDが政策金利を引き上げると市中金利(特に1日物金利)もそれと同じだけ上昇する。 ■0.011%上昇では金融引き締めの効果はない ところが、日銀の金利政策である▲0.1%とは、銀行間の1日間の貸借レートそのものではない。
3層に分かれている545兆円の日銀当座預金(市中銀行が日銀の預けてある当座預金)のうち、たった30兆円弱に付利されている金利のことである。いわば日銀に預け過ぎの部分に適用される一種のペナルティーに過ぎない。
実際、11月2日の銀行間の1日間の貸借レートは▲0.011%だ。マイナス金利政策を解除しても、銀行間の1日間の貸借レートがたったの0.011%上昇するだけだ。「マイナス金利解除」と聞くと大イベントのように聞こえるが、実質的に何も起こらないのである。 先日、日経新聞紙上で、前田栄治前日銀理事が「マイナス金利解除では変動金利型の住宅ローン金利は上がらない」と発言していたが、これがその理由。このニュースで為替が多少円高に振れてもすぐ円安基調に戻るだろう。
■日銀は、この歴史的な円安を止めることはできない
今まで述べてきたように、日銀は出口の第一歩であるYCCの見直しはできない。撤廃もできない。マイナス金利政策の解除はできるが、金融引き締め効果はない。ゼロ金利政策の解除や、ばらまいたお金の回収など、もってのほかである。
日銀はインフレが加速しても何もできないのだ。インフレに対処しようとすれば日銀が自滅してしまうからだ。円の暴落を恐れて、何もしなければ、円はとめどもなく下落を続ける。暴落よりはスピードが遅くなるが、と言うだけの話だ。
さらには長期金利の上昇を抑えるため、お金を回収するどころか、今後もバラマキ続けなければならない(=国債買いオペを継続)。単年度の財政が黒字になるか、はたまた、よほどに長期金利が上昇し日銀以外の国債の買い手が現れない限り、保有国債の減少(=市中からのお金の回収=インフレの鎮静化)など夢のまた夢である。すでお金の回収に入っている他の中央銀行とは、どえらい違いだ。
昨今の円安について、米国の景気が失速して日米金利差が縮小すれば円安は止まり、日銀は助かるのでは? と考える方もいるが、そんな悠長なことを言える時はとっくに過ぎてしまっている。
米国がどうなろうと、日本がデフレや景気低迷が続かない限り、日銀はどこかで他国と同様に金利を引き上げなければならない。より重要なのは、バラマキ過ぎた円の回収を図らねばならないことだ。しかし、今の日銀にそれはできない。
日米金利差が縮小しようがしまいが、日銀の財務は日ごとに悪化(=お金をバラマキ続けている)し続け、改善は全く不可能だ。ばらまいたお金を回収に入っている欧米の中央銀行と、バラマキを継続せざるをえない日銀の違いはどえらく大きい。金利差など小さな問題なのだ。 ■金利上昇に耐えられない「脆弱な日本」に誰がした Bloombergの報道によると、著名投資家のドラッケン・ミラー氏は最近「米財務省が事実上のゼロ金利を利用して長期の国債発行を増やさなかったのは『史上最悪の失策』だ」と批判したそうだ。
「金利が低い時に長期債で資金調達をすべき」はオーソドックスな金融論の教えるところであり、私もJPモルガン時代は、その原則にのっとってオペレーションをしていた。基本のキである。ドラッケン・ミラー氏は、もっと長い期間の長期債を低金利時代に発行すべきだったと米財務省を非難したのだ。
対して日本である。日銀は、統合政府論の実践である「財政ファイナンス」(財政赤字を賄うために、政府の発行した国債等を中央銀行が通貨を増発して直接引き受けること)を事実上実践してきた。 これは統合政府で考えると「せっかく政府が長期国債を発行したのに、日銀が、日銀当座預金という1日のお金に変換してしまった」ことを意味する。米財務省が「長期債の代わりに短期債を多く発行した」どころの話ではない。「長期債の代わりに1日間という極超短期のお金で資金調達をしている」状態を意味する。
金利上昇に対して、とんでもないほど脆弱(ぜいじゃく)な国家を作り上げてしまったのだ。この状態を元に戻すのはもはや不可能もいいところである。
■海外のメディアも日銀のヤバさに気づき始めた
最近、海外のマスコミも日本や日銀に厳しい目を向けるようになってきた。だんだん、日銀や円の厳しい実情が、海外にバレ始めてきたようである。
Bloombergは11月2日、「円はトルコ・リラやアルゼンチン・ペソと同じ部類」というドイツ銀行の為替調査グローバルヘッド、ジョージ・サラベロス氏の主張を紹介した。 このような記事が多くなり、多くの外国人が日銀や円の実態を知るようになれば、Xデイは間近に迫っている。米銀の日銀当座預金の閉鎖も可能性も一段と現実味を帯びてくるだろう。
そうなれば円の紙くず化が近い。保険の意味でもドルを買っておいた方がいいという私の主張を理解していただけるのではないだろうか。